究極のゴールは管理業務の自動化

まだまだ続く業務の流れ

販売、購買、在庫管理にPCソフトを入れているとはいえ、なかなか大変な業務ですね。でもこれで終わりではありません、A社の業務はまだまだ続きます。

外部倉庫からの得意先への出荷

C社に対するY製品群は見込生産を行って在庫を保有し散るため、受注の都度A社は外部倉庫に出荷指示を出しします。外部倉庫は指示に従い出荷を行い、出荷報告をA社に送ります。
在庫品を出荷して売上を計上するのは「販売PC」、{在庫PC」の最も得意とするところです。A社の営業担当者は出荷報告を受けると「在庫PC」に都度出荷入力をします。これでA社は売上と得意先に対する債権を計上します。(実際には自動仕訳が起きる訳では無く、月末にこの情報を元に経理が仕訳を会計システムへ入力します。)
「在庫PC」は出荷した製品の在庫数量を都度引き落とします。

外注先からの出荷報告

各外注先は、生産が完了すると完成品の出荷を行います。
出荷先はD社が次工程の外注先であるE社、E社が次工程の外注先であるF社、F社は得意先のB社又はA社の外部委託倉庫に出荷することになります。

 

事例詳細の項でも説明した通り、D、E、F社はいずれも中小企業であり、A社と同じようにしっかりした情報システムを持っているわけではありません。
このため、事務処理の負荷を減らすために、出荷報告は出荷の都度ではなく、月次に取り纏めて取得することとしています。A社の方でも毎日もらっても処理しきれないのです。出荷報告は各社の請求書を兼ねています。

 

購買担当者の処理

A社の購買担当者は、出荷報告(兼請求書)を入手すると、以下の処理を行います。
@外注生産指示と照合して、「購買PC」に仕入入力をします。
Aこれにより、「購買PC」は外注先に対して仕入計上を行います。
B「購買PC」は「在庫PC」と連動sh知恵いるために、「在庫PC」にD社が生産した部品、E社が生産した中間製品、F社が生産した最終製品が在庫計上されます。
C実際にはF社からA社外部倉庫に入庫されるY製品群以外は在庫として入庫されることはありません。この為、購買担当者はD社、E社からの仕入計上により計上された部品及び中間製品については計上した全数量を払い出し処理を行い、「PC在庫」の在庫数量をゼロにします。
DF社からB社に出荷するX製品群は売上を計上する必要があります。売上計上は販売担当者の役割であるため、購買担当者はF社からB社への出荷についてはその一覧を販売担当者に渡します。

 

販売担当者の処理

販売担当者はこれを受けて以下の処理を行います。
@「在庫PC]に出荷入力を行います。これにより「在庫PC」に計上されたX製品群の在庫が全数量引き落とされ、B社に対する売上計上が行われます。

得意先からの検収通知

得意先おB社、C社はA社からの仕入れを、自社の検収時点で債務として認識します。
B社、C社はA社に対して「検収通知」を送ってきます。「検収通知」は得意先からA社に対する支払明細でもあります。

 

A社の営業担当者は「販売PC」導入当初、これを「販売PC」から出力した売上明細と照合を行い差異を確認しようとしました。ところが様々な要因が混在し、差異の分析は容易ではありませんでした。どうやら、差異の要因は以下のようなものから構成されているようです。
@「販売PC」では出荷基準で売上を計上していますが、得意先は「検収基準」で債務を計上する為、当月出荷で得意先未検収のものは「販売PC]の「売上明細」には計上されていますが、得意先にからの「検収通知」には記載されていません。
A逆に、「販売PC」上は前月の出荷(=売上)となっているものが、「検収通知」では当月検収分として記載されています。
B不良等によりj返品されたものが、「販売PC」に計上されて入ないケースがあります。返品処理の漏れがあるようです。
C単価改訂があった場合に、「販売PC」側での処理が遅れて、単価の相違がある場合があるようです。
D「検収通知」に記載されているのに、「販売PC」で計上されていないものが散見されます。どうやら「販売PC」への出荷入力漏れがあるようです。
このような様々な要因があり、差異分析は容易ではありません。ただでさえ忙しいのに、この差異分析をする時間はなかなか取れません。その上、どんなに差異分析をしたところで、その原因はほぼ全てがA社側の処理の誤りにあり、得意先は検収通知通りにしか支払いを行ってくれません。

 

この為、A社では差異分析をあきらめて、得意先から送られてきた「検収通知」の金額をそのまま売上として計上することとしました。これであれば、売上金額がそのまま入金されるため売掛金管理も楽になりました。

得意先からの有償支給品の相殺

B社から受けている夕有償支給品について、B社はA社に対する仕入債務から相殺することとしています。
このため、B社は「検収通知」と同時に「有償支給品相殺通知」を送付してきます。
A社に入金されるのは「検収通知の金額」−「有償支給品相殺通知」の金額となります。
「有償支給品相殺通知」の金額は、A社が「購買PC」に入力したB社からの有償支給品の仕入明細と合致するはずですが、ここにも差異が発生します。
この差異の分析は本来購買担当者の仕事のはずですが、ただでさえ忙しいのにそんな時間はとても取れません。それに差異を分析をしたところで、B社が相殺してくるのは「有償支給品相殺通知」の金額なのです。
そこで、販売担当者が「検収通知」の金額をそのまま売上計上したのと同様、購買担当者も「有償支給品相殺通知」の照合をあきらめ、得意先から通知を受けた金額に合わせるように仕入訂正を行うこととしています。

仕入先への有償支給相殺

得意先からA社への有償支給がA社への債務から相殺されたように、A社か外注入先への有償支給債権もA社の外注先からの債務より相殺して支払を行います。
購買担当者は、月次に仕入先への「支給品支給通知」より、有償支給分を抽出して、有償支給相殺明細を作成して、外注先へ連絡します。

実地棚卸

A社では、在庫品の棚卸を定期的に行うこととしています。
1.製品在庫
製品在庫として棚卸を行うのは、在庫として保有するY製品群だけです。製品在庫の棚卸は、外部倉庫より月次に報告を受けることにより行います。「在庫PC」には製品在庫の数量が記録されていますが、外部倉庫の報告と差異があることが少なくありません。原因としては「在庫PC」への入力漏れがあるようです。外部倉庫で紛失した可能性もあるのですが、分析が大変なため、外部委託倉庫からの報告数量との差異を「在庫PC」に「棚卸差異入力」を行うことで、「在庫PC」の数量を外部委託倉庫からの報告数量に置き換えています。
2.原材料在庫
原材料在庫として保管するのはY製品群の生産に使用する原材料だけで、製品在庫と同様に、月次に外部委託倉庫より報告を受けています。前述のように、原材料在庫の「在庫PC」への入出庫処理は月末にまとめて行うために、その際に外部委託倉庫よりの報告数量に月末在庫が合うように入出庫数量を調整して入力するようにしています。
3.仕掛品在庫
(未作成)

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