生産計画
得意先のB社、C社より発注計画を受けるところからA社の業務は始まります。
発注計画はB社、C社が今後A社に対してどの部品(A社にとっては製品)を何個発注(A社にとっては受注)するかを事前にA社に対して知らせるものです。
発注計画は原則月毎に、今後数か月間の予定数量が日別に記載されています。
注計画はあくまでも計画であり、A社にとっては確定受注ではありませんが、経済環境の急変等よほどのことが無い限りある程度信頼性があります。
A社ではこの発注計画に基づき、以下のような処理を行います。
1.製品X群については確定受注からの生産指示で納期に間に合うために、ここではアクションは起こしません。
2.製品群Yについては、受注を受けてから納期に余裕がないために、1週間後の受注数量について見込生産手配を行います。
なお、B社、C社とも発注計画はEDIで送付してきますが、A社ではそれを取り込むシステムが無いために、Excel出力して、Excel上で管理を行っています。
受注
発注計画を受領した後、B社、C社からは日々発注(A社には受注)が来ます。
受注も生産計画と同様、EDIで送付されます。、A社では1年前にPC版の販売管理システム(以下「PC販売」)を導入したので、受注を受けた販売担当者は、EDIデータを「PC販売」のフォーマットに加工して「PC販売」に取り込みを行います。
ここまでは一見システム化が出来ているようですが、「PC販売」は在庫商品を販売するという機能しかありません。委託生産した製品を「PC販売」で扱おうとすると一工夫が必要です。A社では試行錯誤しながら工夫をして運用をしています。この工夫は受注時点で下記のような処理を行うほか、後段の業務の様々なところで現れてきます。
@C社からの受注は見込生産で在庫を持っているため、受注データをExcel上で加工して「出庫指示データ」としてメール添付で外部委託倉庫に送付します。
AB社からの受注は、受注生産で外注先から得意先へ直送されるため、ここでの処理は行いません。
「PC販売」は{P購買」、{PC在庫」と連動していて、ERP的な機能があるようにも見えますが、肝心の生産管理機能がありません。そこで、販売担当者は購買担当者に以下のように生産指示を行います。
@B社から受けた受注に対して、受注数量をそのまま生産指示として発行します。
AC社からの受注は「生産計画」に基づいて1週間ごとに生産指示を発行しているために、ここでは生産指示は波高しません。
得意先からの支給品の受領
A社は受注と同時にB社、C社から「支給品支給通知」を受領します。この処理は購買担当者の仕事です。A社ではまだ小規模の会社なので、数人の購買担当者が生産管理、原材料購買、支給品の管理、在庫管理等の業務を幅広く行っています。
B社:
B社よりは「原材料O」の有償支給を受けます。支給数量はB社で決定し、支給品はA社の外注先であるE社に直送されます。
C社:
C社よりは「原材料P」の無償支給を受けます。支給数量は同様にC社で決定し、支給品はA社の外部委託倉庫に送付されます。
「支給品支給通知」はB社、C社ともEDIで送付されます。これをA社では購買担当者が受領し、以下の処理を行います。
B社からの有償支給品
@B社からの「支給品通知」をExcel上で加工して、B社を仕入先として、「PC購買」に取込を行います。「PC購買」はこれで仕入計上し、「PC在庫」と連動して在庫を増加させます。
A支給品は外注先E社に直送されるため、「支給品通知」を{PC購買」入力用とは別の様式に加工してE社にメール添付で通知します。
B「PC購買」で仕入計上を行うと、「PC在庫」に在庫計上がされますが、実際には支給品はE社に直送されているために委託倉庫への入庫はされず、在庫は増えません。この為、「PC購買」に仕入計上するのと同一のタイミングで、「PC在庫」に対して「出荷処理」を行います。
C社からの無償支給品
@無償支給であり、預り在庫であることから、「PC購買」には入力は行いません。本来であれば預り在庫として在庫管理することが必要ですが、そこまで手が回らないためにこのような処理になっています。
A支給品は外部委託倉庫に入庫されるために、外部委託倉庫に対して「支給品支給通知」を加工して「入庫予定」を作成し、メール添付で送付します。
外注生産指示の作成
購買担当者は「生産指示」に基づき外注先であるD社、E社、F社に生産指示を出す必要があります。
1つの製品を生産するのに、3社の外注先が連続で生産を行いますので、購買担当者はD社に部品生産、E社に中間製品生産、F社に最終製品生産の指示を出します。
生産管理システムが入っていればこれは「部品構成表」の登録に従い、システムが自動的に生産指示を作成しますが、A社では生産管理システムが無いので、購買担当者が作成しなければなりません。
幸い、1つの製品を生産するのに必要な生産指示は決まっているので、購買担当者はExcel上に製品の生産数量を入力するとどこに何を発注するするかが自動的に計算してくれるように工夫をしています。
購買担当者はこのExcel上で作成された生産指示をコピーして、D社、E社、F社のそれぞれにメール添付又はFaxで送付しています。
また、「PC購買」にはそれぞれの外注先が生産する部品、中間製品、最終製品を仕入商品として「発注入力」の取込を行います。
仕入先への資材手配
購買担当者は、外注先に支給する原材料K〜Nをそれぞれの仕入先に対して発注します。
何をいくら発注するかは、購買担当者が工夫して作成した先ほどのExcelファイルで製品の生産数量を入力するとExcelで作成してくれます。
@仕入先にはこのExcelで作成した発注データをメール添付又はFaxで仕入先に送付します。
A外部委託倉庫に入庫される発注原材料については外部委託倉庫に対して「入庫予定」をメール添付又はFaxで送付します。
B仕入先から外注先に直送する原材料についてはそれぞれの外注先に対して「支給品支給通知」をメール添付又はFaxで送付します。
原材料仕入計上
発注した原材料の仕入計上は以下のように行います。
日々の業務の流れ
@発注した原材料のうち、製品Y群に使用する原材料は外部委託倉庫に入庫します。委託倉庫からは入庫報告が送られてきます。
A製品X群に使用する原材料は外注先に直送されます。外注先からの入荷報告はありません。
B仕入先からは出荷報告が送られてきます。
C購買担当者は日々これらの報告を受けますが、月末までは特別な処理は行いません。
月末の処理
@月末に仕入先より請求書を入手します。請求書には仕入先からの出荷明細が添付されています。
A購買担当者はこれを当月に発注した発注明細と照合し、「購買PC」に入力します。
B「購買PC」に仕入入力を行うと「在庫PC」と連動して在庫数量が増加しますが、外注先への直送品は在庫としての入庫は無いために、外注先直送品については同数を「在庫PC」に出庫処理を入力します。
日々に送られる仕入先からの出荷報告や外部帷幄倉庫からの入荷報告は、請求書と発注書に差異がある場合のみ確認を行ないます。請求書と発注書に差異が生じるケースは多くあり、原因が解明できないケースもあります。その場合にはほとんどの場合仕入先からの請求書に基づいて仕入計上を行います。
在庫品の外注先への出荷
外部委託倉庫はA社からの指示で外注先に対して在庫品の出荷処理を行い、日々出荷報告をA社に対して行いますが、A社では日次では特別な処理は行いません。
日々入出庫を把握しないのでA社の「在庫PC」では在庫数量を把握することができません。この為在庫数量の確認が必要な場合にはA社は外部委託倉庫に在庫数量の問い合わせを行います。
外部委託倉庫では自社の在庫管理システムを持ち、入出庫の都度記録しています。但し、A社には外部委託倉庫の在庫管理システムに直接アクセスして在庫照会を行うことが出来ないので、電話での問い合わせになります。
A社の業務はまだまだ続きます。
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